東京のすし屋の娘でもある、江戸前寿司伝道師Satomiです。

皆さんは、すしネタで何が好きですか?

マグロ、タイ、いか…タコを好きな人もいるのではないでしょうか。

「このタコ!」は、江戸では「馬鹿野郎」の上をいく罵倒語でした。

旦那さんの電話番号を「タコ」と登録している人を見たこともあります。

では、なぜ「タコ!」は馬鹿にする言葉なのかご存知ですか?

「なぜイカではなくてタコなんだろう?」「タコはバカっぽい顔しているからかな?」など疑問に思ったことはありませんか。

以前、市場の4人くらいいるお店で、Aさんは、うに、穴子、Bさんはアワビ、Cさんにはタコ、などとそれぞれ仕入れてあるかを確認する担当が違う店があります。もしかしたらうちだけかもわかりませんが…。

父がCさんに「あっタコ!」と言っていたことがあり、Cさんも普通に「タコねー」と言っていたけど、「タコ!って失礼じゃない?!」と言ったらお店にいる人みんなが爆笑していることがありました。

それからそのCさんは「おはようございます。タコでーす」と挨拶をするようになったという、ほっこりした思い出があります。

いつも「タコちょうだい」と頼まれるし、自分がタコ担当だと自覚があるから何も思わないのかもしれないし、あからさまにそんな喧嘩を売るようなことしないですもんね。

でも、「このタコ!」という悪口は使わずとも誰もが知っているのではないでしょうか。

今回は、「馬鹿野郎!」の上をいく罵倒語「タコ」を紹介したいと思います。

江戸時代の武士と家来

さて、この「タコ」とは、江戸時代に遡ります。

江戸には武士が住んでいたことはご存知ですよね。

武士につかえる家来を旗本・御家人といいました。

旗本と御家人の違い

旗本と御家人の違いですが、

旗本は将軍に挨拶ができましたが、御家人にはその資格がありませんでした。

他には、直参旗本は格としては大名と同じで、騎乗・袴・陣笠が許され、御家人はその下で、通常、袴の着用も騎乗も許されませんでした。

そしてその旗本や御家人の下の家来は、またもの・陪審などと呼ばれました。

タコと言えば…

「人をバカにするタコの話から外れてる」と思ったかもしれませんが、「このタコ!」と言われて思い浮かぶのは、魚介類ではないですか?

「このタコーっていうけど、このイカー!って聞かないよね」という話を聞いたことがあります。

タコとイカって、なぜか「タコといえばイカ」と思うところがあるのではないでしょうか。

それもここに関係するのかもしれません。

「タコ」と「イカ」

旗本は御家人を「御目見以下」の意味の「以下」、御家人は旗本を「タコ!」よび、反目しあっていたとも言われています。

ただ、この「タコ」は、上にあがることばかり考えている意みの「タコ」なので、この「凧」でしょう。

子供の喧嘩「タコ!」と「イカ!」

学問所や剣術の道場の行き帰りに待ち伏せして、旗本の子供を「このタコ!」と言い返していたとも言われています。

「以下!」と言われれば「タコ」と言い返すしかなかったのか、それが転じて、身分の上の人をあざけって「タコ」「タコやろう」というようになり、江戸の一般の罵倒語になっていったと言われています。

子供の世界では、旗本と御家人の対立は意外に根が深かったようで、小説家の岡本綺堂さんの『半七捕物帳』の『朝顔屋敷』にも旗本の子供が学問所の素読吟味の日に御家人の子供に虐められるのを恐れて、家出するという話が出てきます。

動物はバカにされている事が多い?

他にも、元々は寺の坊主をさげすんで言った言葉だったという説などもありますが、

動物を人間から見た場合に劣ると考えて、罵倒語とすることはよくあるようで、日本語に限ったことではなく、英語でもdonkey=ロバはバカの意味であったり、chicken=雌鶏は臆病者意味であったり、時代的にも地域的にも、かなり古くから広く用いられていたのではないでしょうか。

Youtube

参考 : 『半七捕物帳』 御家人と旗本 旗本と御家人の違い 岡本綺堂 旗本御家人

知って合点江戸ことば 大野敏明

まとめ

江戸時代の旗本と御家人の罵倒から始まった言葉が、今もなお知られているようですね。

今回は、すしのネタにもあるので、なぜ人をバカにする時に「タコ!」というのかを紹介しました。

すしを食す際の「ネタ」にしていただけたらと思います。

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