東京のすし屋の娘でもある、江戸前寿司伝道師Satomiです。

皆さんは、握り寿司が東京の郷土料理だったことはご存知ですか?

また、「すし」と「おにぎり」の違いを聞かれた時に、どう答えますか?

「形が違う」としか答えられなかったら、それは「すしの危機」の1つと言えかもしれません。

和食が、無形文化遺産に登録されました。登録を目指した背景には「和食の危機」があったからだそうです。それは、日本人らしさが失われていることでもあります。

登録時に、おもてなしの心を強調している背景には、和に関する教養が衰退し、日本古来の趣向や室礼を、ほとんど顧みなくなってきているからと言われているそうです。

そこで、今回は、日本人だからこそできたであろう「握り寿司」のお話をしようと思います。

はじめに

寿司の話をする前に、頭に入れておいてほしいことが2点あります。

①TTP

よく、起業家セミナーなどに行くと聞く言葉なのですが、TTPご存じですか?

「徹底的にパクれ」

「パクってアレンジして自分のもの」

とよく聞きます。しかし、これは日本がずっとやってきていることなんです。

タミル文化がくればタミル語になり、朝鮮文明が入れば朝鮮語、中国文明が強くなると漢字を学ぶ。こんな具合に、歴史的に見ると、日本では文明のあとに言語がついてくる。

江戸時代には、ヨーロッパへの窓口だったオランダ語を必死に習う。

日本は時代時代に適用してやってきた。

現在はアメリカ、古代は唐、近代は西洋。アメリカ文明が強ければ、それに適応してアメリカの言語を取り入れようとする。でも、根本から大変化が起こるわけではない。

このように、日本は、いつも文明の輸入から、新しいことが始まっている国なので、受け入れる感性・情感こそが最も特徴的な日本の文化であると書いている言語学者がいました。

パクってアレンジして自分のものにしてきている国なんです。

これは、日本の諸武芸に共通した修行の段階を説明する言葉「守破離」にも通ずるのではないでしょうか。

「守破離」は、もともと、茶道の修業段階を教えたものだったようです。

これがやがて、日本の諸武芸に共通した修行の段階を説明する言葉として使われるようになったとされます。

このやり方は、日本人の基本になっており、日本文化を語る上では切っても切れない関係にあるのではないでしょうか?

例えば、日本文化の一つになっている「アニメ」。海外アニメーションが明治末期から輸入され、それを真似る形で国産アニメーションの歴史が始まるようですが、ディズニーが手本になっているようです。大きく違う点としての1つは、ディズニーは1話25分で一万五千~2万枚

アトムは1話30分でその1/10、つまり1,500枚かそれ以下というかなり少ない動画枚数で制作していることだそうです。

この徹底的にパクってアレンジしたことが、「握り寿司」の誕生にも関係があるようです。

②「日本の良さを生かす」

受け入れる感性はもちろんですが、「日本の良さを生かす」ということも忘れないでおいてほしいものです。

音楽の話では、X Japan。海外の方にも人気がありますが、X Japanも昭和歌謡をベースに曲を作っていると聞いたことがあります。

「周りに合わせすぎる」というのも日本人の特徴の1つになるかもしれません。

物事には良い面と悪い面どちらも見てとれますが、この「周りに合わせすぎる」というのが裏目に出た失敗例があります。それは、アニメのお話です。

2003年『ファインディングニモ』が公開されましたが、実は、1989年に日本で『ニモ』という映画が公開され、アメリカでも91年に公開されていたそうです。しかし、話題になりませんでした。

この失敗は、アニメ制作に対する考えが異なる、日米のスタッフの連携がうまくいかなかったようですが、日本のアニメが世界市場を目指すことの難しさ、ストーリー構成やキャラ造形の文法が異なる、海外に「無理に合わせる」と言った点が大きな問題だったそうです。

海外に無理に合わせようとすることを捨て、徹底的に日本国内向けに続けたことが結果的に日本のアニメの独自性を高め、洗練され、それを海外の人たちが受け入れるという構図ができていったようです。

日本にいても、海外の方との交流が増えてきていると思います。これから先、日本の良さを活かしながら、グローバル対応をするという点が大切になるのではないでしょうか。

TTPと日本の良さをいかす対応という2点を頭に入れながら、「すし」についてのお話を聞いていただけたらと思います。

すしの誕生と移り変わり

すしは、元々東南アジア生まれの「漬物」でした。

すしの誕生は、「なれずし」と言い、主に魚を塩と米飯で乳酸発酵させたものから始まります。2ー3ヶ月つけるので、飯は発酵して形がなくなり魚だけを食べました。

室町時代になると半月から1ヶ月おいたものを食べるもので、飯も魚と一緒に食べる「生なれずし」が登場。

発酵して「酸っぱいのがすし」ということで、

江戸中期になると、自然発酵で飯が酸っぱくなるのを待たずに、飯に直接酢を加えて作る「早ずし」が開発され、江戸中期には「すし」といえば、酢飯を使った「押し寿司」という時代が続きます。

数ヶ月待っていた寿司からすれば、半日から1日程度で食べられる押し寿司はだいぶ食べるまでに早くなりました。しかし、すぐには食べられません。

そこで、握った飯の上に味をつけた魚介を乗せた握り寿司が、待たずにすぐに食べられるすしということで大ヒットしたと言われています。

このように、海外から受け入れたものをその時代、時代に合わせて、アレンジしてオリジナルにしたものが、現在の握り寿司なのではないでしょうか。

ちなみに、カリフォルニアロールもキンパも日本人が作ったものだと言われています。

握り寿司に見る「おもてなし」

そして、日本ならではのおもてなしは、握り寿司にも見ることができます。

「おもてなし」をする側は、相手が感動する対応をすることです。

日本推しラトビア人のアルトゥルさんは、以前こんなことを呟いていました。

「日本の飲食店に入ると普通に無料で水が出てきたり、手を拭く温かいタオルが出てきたり、それだけでびっくりする気持ちになるのに、ご飯を食べた後に温かいお茶が無料で出てきたら感動で泣くしか…」と。日本では当たり前だと思われているかもしれませんが、おしぼりやお茶、お水は本来、感動するおもてなしの一つなんですよね。

この「おもてなし」は、実は握り寿司のサイズにも見ることができます。

握り寿司のサイズ

お店や職人さんによって違うので一概には言えませんが、現代の握りすしの大きさにも「おもてなし」の心が見てとれると考えます。日本人らしさが職人さんの配慮に見ることができます。

「サイズを変えて作るのは当たり前だ」という職人さんもいますが、「気の利く職人は、サイズを変えて作る」という職人もいます。

何度も言いますが、サイズは、職人さんやお店によって違うので一概には言えません。

しかし、サイズを変えて作るのも「おもてなし」の一つで、日本人らしさを感じます。私は、これも含め、「日本の寿司」と捉えています。

例えば、都心で小ぶりに作ってしまうと、お客さんはお腹が満たされず、いっぱい食べてしまいます。そうすると、価格が高くなり過ぎてしまう…そのため、大きめに作る職人さんもいるでしょう。相手を思いやる気持ちですね。

また、高齢者や子供は大きいと食べにくいし、全部食べられないかもしれない。そのため小さめに作って、食べやすく、そして全て食べられるように作る。

これは、おもてなしの心に応える1つ「食べ物を残さずに食べる」を食べる側ができるように配慮されたものでもあるかと思います。自由にサイズを注文できるのも握り寿司をカウンターで楽しむ1つでしょう。

実際、「高級店」と言われる店で小ぶりで出される寿司を食べたけど、お腹いっぱいにならないし、連れて行ってもらったから自分でオーダーもできないし、満足できなかったという声を聞いたことがあります。

Youtube

参照:『日本・日本語・日本人』(大野晋・森本哲郎・鈴木孝夫 著)

『すしから見る日本 日本全国さまざまなすし』(川澄健 監修)

『現代すし学』 (大川智彦 著)

『世界遺産になった食文化8 日本人の伝統的な食文化 和食』(服部津貴子 監修)

ニモ ファインディングニモ 日本推しラトビア人 アルトゥル Twitter 守破離

まとめ

一人一人をよく見て、対応を変えるということを握り寿司1つみてもできるのは「おもてなし」精神のある日本人ならではな気がします。

また、最近は「おもてなし」をきちんと理解していない人が多く感じます。

おもてなしはされるばかりではなく、それにきちんと応えることで成り立つものです。

海外を目指す寿司職人の学校をよくみかけますが、日本人らしさを活かした対応ができると良いですね。そのためには、グローバル対応を知ることはもちろん、日本人らしさ、日本文化をきちんと理解しておくことが何よりも大切になるでしょう。すしとは何かを詳しく知ることも大切でしょうね。そして、TTPと日本の良さを活かしながら、すし「もどき」ではなく、新しいすしがあらたに生まれると良いですね!

まずは、知らないことに気がつくことから始めることをお勧めします。

皆さんの知っているTTPされたものがあればコメントくださいね!

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